*陰部のかゆみ*
きちんと洗っているのにかゆい、かゆくて眠れない、夜間に目が覚める、ひりひりする・しみる感じがある。女性はときに陰部のかゆみで悩むことがあります。主な原因として、感染症(カンジダなど)や、女性ホルモン低下による萎縮性膣炎が挙げられますが、ほかにも、下着・生理用品・洗浄剤(石けん・ボディソープ)などによる刺激やかぶれが関与することがあります。 自己判断で様子をみている間に悪化することがあります。セルフケアとしては刺激の少ない洗浄剤でやさしく外陰部のみを洗うことが大切です(膣内洗浄は原則不要です)。おりものの量・色・においに変化がある、パートナーが性感染症と診断された、皮膚がただれている、水疱や潰瘍がある、といった場合には受診することをお勧めします。
婦人科では、原因を特定するため、問診・視診・触診を行い、必要に応じておりもの検査や皮膚の検査を実施します。カンジダ膣炎の場合は診察所見で治療を先行することがあります。おりもの検査や性感染症検査は結果が出るまで1週間前後かかる場合があり、その間は他者への感染予防が大切です。
*陰部のできもの*
陰部にできる「できもの」には、バルトリン腺嚢胞・膿瘍、毛嚢炎、粉瘤、尖圭コンジローマ(HPV)、単純ヘルペス感染、接触性皮膚炎、外傷 などが挙げられます。原因により性状はさまざまで、しこり、痛みを伴う腫れ、水疱、潰瘍、いぼ状の病変 などがみられることがあります。尖圭コンジローマやヘルペス感染は性交渉によりパートナーへ感染する性感染症です。パートナーと一緒に治療をすることが大切です。早めに受診しましょう。診断のため、まず視診・触診を行い、必要に応じて超音波検査や各種検査を実施いたします。バルトリン腺膿瘍では切開排膿などの処置が必要になることがあります。検査結果を踏まえ、最適な治療をご提案いたします。強い痛みや腫れがある場合、または症状が軽度でも明らかな変化がみられる場合は、早めの受診をご検討ください。
*おりもの異常*
おりものは女性のホルモン周期に合わせて量や性状が変わります。一方で黄色・緑・茶色・血性に見える、においが強く魚臭く感じる、泡立っている、あるいはカッテージチーズのように見えるといった変化が続く場合は、異常のサインである可能性があります。体調や周期による一時的な揺らぎもありますが、気になる変化が続くときはご相談ください。原因としては、細菌性膣症やカンジダ膣炎、トリコモナス腟炎、クラミジア・淋菌による感染症などがよく知られています。ホルモンバランスの変化、IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)挿入後の初期変化、頸管ポリープなどが背景にあることもあります。複数の要因が重なって起きていることも少なくありません。
受診の目安としては、変化が1週間以上続く、あるいは次第に強くなるとき、かゆみ・痛み・不正出血・下腹部痛を伴うとき、またはパートナーが性感染症と診断された、あるいは不特定の性行為があった場合などが挙げられます。自己判断で市販薬を続けると診断が遅れることがありますので、気になる際は早めにご相談ください。
婦人科ではまず問診と診察(内診・経腟超音波)を行い、必要に応じておりものの顕微鏡検査、培養、核酸増幅検査(NAAT)などで原因を確認します。加えて、状況に応じて子宮頸がん検診や頸管ポリープの評価をご案内することがあります。治療は原因に合わせて、抗菌薬・抗真菌薬・整菌薬(腟内の細菌環境を整える薬)などを用い、あわせて刺激の少ない洗浄、通気性のよい下着の着用、性交後のケアといった生活面の工夫もお伝えします。適切な診断と治療により改善が期待できますので、無理のない範囲で一緒に進めていきましょう。
*下腹部痛*
子宮や卵巣の疾患のために下腹部痛が起こることがあります。突然の激しい腹痛で自制出来ない場合は卵巣嚢腫の茎捻転や子宮外妊娠などの可能性があります。救急対応を考慮してください。自制可能な痛みでも、継続したり広がる場合や不正出血、おりもの異常、妊娠の可能性、下腹部にしこり、卵巣嚢腫の既往などがある場合はなるべく早く受診して下さい。必要な検査を行い原因を明らかにし、それに即した治療を行います。