血液検査にてLDL-コレステロールが140㎎/dl以上、またはHDL-コレステロールが40㎎/dl以下、中性脂肪が150㎎/dl以上、LDL-コレステロールと中性脂肪を足して170㎎/dl以上の場合脂質異常症と診断されます。動脈硬化は血液中のLDL-コレステロールが血管壁に沈着することが始まりです。HDL-コレステロールはこのLDL-コレステロールを除去する作用があります。中性脂肪はLDL-コレステロールの粒子を小型化してよりたちの悪いものに変える作用があります。つまり、LDLは低く、HDLは高く、中性脂肪は低く保つことが理想です。動脈硬化は血中脂質異常のみで起こるわけではありません。当院では病歴や併発症、血管硬化度測定や頸動脈でのプラーク(コレステロール沈着)度合いも考慮して治療方針を決めます。生活習慣の改善を第一選択として、必要に応じて薬物治療を選択します。LDLコレステロールが高い場合、動物性脂肪や乳製品、卵、揚げ物などを適切な量に制限すること、食物繊維を十分にとることが大事です。体力に合わせてウオーキングやジョギング、また筋トレでも血清脂質の改善が認められます。普通の歩行でも時間が長ければHDLコレステロールが上がり、中性脂肪が下がることが報告されています。適量のアルコール(ビール350mL 1缶)程度ならばHDLコレステロールを適度に上げる効果があるとされています。
従来HDLコレステロールは高いほどいいと考えていましたが、最近になって高HDL-コレステロール血症は必ずしも善玉とは考えられないことが報告されています。高HDLの原因の一つとしてコレステロールエステル転送蛋白(CETP)欠損症が注目されています。CETPはHDLのコレステロールをLDLやVLDLに転送してHDLやLDLの量と質を調整していますが、CTEPが欠損するとこの転送がうまくいかず、HDLの機能不全が生じると思われます。HDLが100mg/dl以上の場合はCTEPの異常を疑う必要があり、また、狭心症や心筋梗塞、動脈硬化性疾患にも注意する必要があります。慢性の大量飲酒や種々の薬剤、原発性胆汁性肝硬変やCOPDがCTEP活性を低下させHDLの高値をきたすと言われています。